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大阪高等裁判所 昭和58年(ネ)1817号 判決 1984年4月18日

控訴人

安田火災海上保険株式会社

右代表者

後藤康男

右訴訟代理人

水野八朗

被控訴人

山本恵生

右訴訟代理人

谷口曻二

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

第一  当事者の求めた裁判

控訴人は、「原判決中控訴人敗訴部分を取り消す。被控訴人の請求を棄却する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴人は控訴棄却の判決を求めた。

第二  当事者の主張

一  被控訴人の請求原因

1  控訴人は保険業等を目的とする株式会社であるところ、訴外西川善市(以下「訴外人」という)は控訴人との間に、昭和五六年一〇月二四日、和五五サ二〇三五を被保険自動車とし、自己を破保険者とする左記の自家用自動車保険契約を締結した。

(1) 保険期間は昭和五六年一〇月二六日から昭和五七年一〇月二六日午後四時までとする。

(2) 自損事故条項

(イ) 控訴人は、被保険自動車の運行に起因する急激かつ偶然な外来の事故により被保険者が身体に傷害を被り、かつそれによつてその被保険者に生じた損害について自動車損害賠償保障法第三条に基づく損害賠償請求権が発生しない場合は、保険金(死亡保険金等)を支払う。

(ロ) 控訴人は被保険者が右の傷害を被り、その直接の結果として死亡したときは、一四〇〇万円を死亡保険金として被保険者の相続人に支払う。

(3) 搭乗者傷害条項

(イ) 控訴人は、被保険自動車の正規の乗車用構造装置のある場所に搭乗中の者(被保険者)が被保険自動車の運行に起因する急激かつ偶然な外来の事故により身体に傷害を被つたときは、保険金(死亡保険金等)を支払う。

(ロ) 控訴人は被保険者が右の傷害を被り、その直接の結果として被害の日から一八〇日以内に死亡したときは、被保険者一名ごとの保険証券記載の保険金額の全額を死亡保険金として被保険者の相続人に支払う。

(ハ) 右保険金額を七〇〇万円とする。

(4) 右(2)、(3)の保険金は、被保険者が死亡した時から六〇日以内の請求に基づき、該請求のあつた日から三〇日以内に支払う。

2  訴外人は昭和五六年一一月六日午前五時三〇分ごろ、被保険自動車を運転して和歌山市宇治籔下三番地先南海橋上を通過中、右自動車を南海橋の鉄製欄干に激突させ、その直後、紀の川に転落し、同日午前五時五〇分ごろ死亡した。

3  訴外人の死亡は本件事故の結果生じたものである。

4  被控訴人は訴外人の唯一の相続人である。

5  被控訴人は控訴人に対し1(4)記載のとおり同(2)(3)掲記の保険金合計金二一〇〇万円の請求をなしたが、控訴人が支払わないので、被控訴人は弁護士に委任して本件訴訟の提起を余儀なくされたが、弁護士費用は金一〇〇万円を下らない。従つて被控訴人は控訴人の債務不履行により金一〇〇万円の損害を被つた。

6  よつて被控訴人は控訴人に対し右保険金並びに弁護士費用合計金二二〇〇万円および内金二一〇〇万円に対する履行期後であることの明らかな昭和五七年三月一日以降右支払ずみまで商事法定利率年六分の割合による遅延損害金の支払いを求める。

二  請求原因に対する控訴人の答弁

1  請求原因1、2記載の事実は認める。

2  同3の事実は否認する。本件事故と訴外人の死亡との間には因果関係は存しない。

3  同4は不知。

4  同5のうち被控訴人が控訴人に対しその主張の如く保険金の請求をしたが控訴人が支払わなかつたことは認めるが、その余は否認する。

三  因果関係についての控訴人の主張

1  訴外西川善市が本件衝突事故により死亡するにいたつた事実経過は次のようなものである。すなわち、訴外人は昭和五六年一一月六日午前五時三〇分ごろ被保険自動車を運転して和歌山市宇治籔下八三番地先南海橋上を通過中、ハンドル操作を誤つて右乗用車を南海橋の鉄製欄干に激突させた。訴外人は右激突の際に顔面をハンドルにぶつつけて鼻骨骨折及び出血を伴う鼻背部打撲の傷害を受けた。訴外人は乗用車の運転席ドアが欄干に引つかかつて開かなかつたので、助手席(進行方向左側座席)ドアから車外の南海橋上に出て後部トランク付近まで歩いて行つた。その後訴外人が紀の川に転落するにいたつた経過は明らかではないが、諸状況から考えて誤つて橋から転落したものと断定せざるを得ない。紀の川に転落した訴外人は、直ちに水面下に沈むことなく、しばらくの間事故現場付近の水面上で「助けてくれ」と叫んでいたが、ついに溺死した。

2  本件自家用自動車保険契約の自損事故条項に基づき、被保険者の相続人が死亡保険金請求権を取得するには、被保険自動車の運行に起因する急激かつ偶然な外来の事故と被保険者がその身体に被つた傷害との間に相当因果関係が存在し、かつ右傷害と被保険者の死亡との間に相当因果関係の存在することが必要である。

また搭乗者傷害条項に基づく死亡保険金請求の場合にも、被保険自動車の運行に起因する急激かつ偶然な外来の事故と被保険自動車の正規の乗車用構造装置のある場所に搭乗中の者(被保険者)がその身体に被つた傷害との間に相当因果関係が存在し、かつ右傷害と被保険者が被害の日から一八〇日以内に死亡したことの間に相当因果関係の存在することが必要である。

しかしながら本件衝突事故により訴外人が身体に被つた傷害は前記のとおり鼻背部打撲傷であり、右は鼻骨骨折および出血を伴つたが、それ自体では致命傷となりえず、また通常の判断能力および歩行能力を喪失させる程の重度なものでもなかつた。従つて鼻背部打撲傷と死亡との間に条件関係は認められないし、仮に条件関係の存在が肯定されたとしても、本件のような軽い傷害のため判断を誤つて橋から転落して溺死することは希有なことであり、相当因果関係は認められない。

また本件事故は、自動車ごと川に転落した場合ではなく、訴外人が助手席ドアから車外の南海橋上に安全に脱出できたものなのであるから、脱出できた時点で因果関係は中断しているものとみるべきである。

3  保険者の損害填補義務は、保険契約中の金銭給付約束に基づく金銭支払義務であり、生じた損害の填補そのことを本質的内容とする不法行為者や債務不履行者の負う損害賠償義務とは異なる。被控訴人は本件保険契約の解釈として事故と死亡との間に相当因果関係があれば足りると主張しているが、これは民法におけるいわゆる損害賠償と損害保険における損害填補との相違を無視するものというべきである。保険者の損害填補義務は保険事故によつて生じたいつさいの損害を填補する義務を負うものではなく、保険契約で約定した損害のみを填補する義務を負うにすぎない。

四  因果関係についての控訴人主張に対する被控訴人の認否と反論

1 訴外人が南海橋上で衝突事故を起こしその直後紀の川に転落して溺死するにいたつた客観的な事実経過は、おおむね控訴人の主張するとおりであるが、同人がその被つた傷害により通常の判断能力及び歩行能力を減退させるものであつたことは充分考えられるところである。また控訴人は、訴外人が乗用車の助手席ドアから車外に出て後部トランク付近まで歩いていつたと主張するが、その内容は漆黒の闇の中を、しかも雨の降りしきる中を自動車にそつてさなずり歩いたというものであることに留意すべきである。

2  本件自損事故条項についての本件事故における因果関係は、保険金請求権発生要件としての自損行為と損害発生(訴外人死亡)との間の因果関係の問題と、自損行為による保険金支払義務範囲としての自損行為と損害との間の因果関係の問題の二つに区分される。前者の因果関係は条件関係としての事実的因果関係で足り、後者の因果関係は相当因果関係の問題であるが、自損事故についての保険金額は約款上金一四〇〇万円と定額化されているため、現実には後者の因果関係は問題とならない。しかして本件自損事故と訴外人の死亡とは時間的にも場所的にも極めて接着しているのであり、事実的因果関係の存することは明らかである。

3 のみならず、本件自損事故と死亡との間には相当因果関係が存する。すなわち、本件事故は訴外人のハンドル操作の誤りによるものと思料されるのであるが、雨の降り続く中で街灯も消え暗闇のしかも狭い橋の上での自損事故のため、鼻骨骨折等の傷害を受けた訴外人が助手席側ドアから車外に脱出したものの方向感覚が正常でないまま闇の中を手深りで安全な場所を求めて自動車に沿つてさなずり歩いたことも容易に推認でき、同人が後部のトランク付近にいたつたことは、同じ状況下におかれれば誰しも通常採るであろう行動というべきである。このように精神的、身体的に極度に動揺していた訴外人が自動車後部付近にいたり、その直後に高さ僅か九五センチメートルのしかも本件衝突事故のためぐらぐらしていた欄干から誤つて紀の川に転落し、溺死するにいたつたものであるが、右自損事故と傷害と川への転落とが時間的、場所的に極めて接着した中で生じているのであるから、特段の事情のない限り事故と死亡との間に相当因果関係の成立を肯定すべく、相当因果関係の成立を妨げるべき特段の事情はなんら見出せない。

4  以上2、3の自損事故条項についての本件事故における因果関係の問題は、搭乗者傷害条項についての本件事故における因果関係についてもそのまま妥当するものである。

5  控訴人は、事故と傷害との間に相当因果関係が存在し、かつ右の傷害と死亡との間にも相当因果関係が存在することが必要であると主張する。しかし約款は通常の場合を想定し、かつ死亡が別の原因である場合、たとえば医療過誤などにより通常ならば死亡しないような傷害で死亡した場合や、傷害とは無関係の余病を併発して死亡した場合などを除く趣旨を明確にするため、「傷害を被り、その直接の結果として、被害の日から一八〇日以内に死亡したとき」と表現しているにすぎず、要は自損事故と死亡との間の因果関係の存否が問題となるものであることが明らかである。

第三  証拠関係<省略>

理由

一控訴人が保険業等を目的とする会社であること、訴外人が控訴人との間に被控訴人主張のとおりの自家用自動車保険契約を締結したこと、訴外人が昭和五六年一一月六日午前五時三〇分ごろ被保険自動車を運転して和歌山市宇治籔下八三番地先南海橋上を通過中、右自動車を南海橋の鉄製欄干に激突させ、その直後紀の川に転落し、同日午前五時五〇分ごろ死亡したこと、以上の事実はいずれも当事者間に争いがない。

<証拠>によれば、被控訴人は訴外人の長女であり、訴外人の唯一の相続人であることが認められ、右認定に反する証拠はない。

二1  被控訴人は、本件事故により被保険者たる訴外人が死亡したものであるとして本件保険契約の自損事故条項、搭乗者傷害条項にもとづき死亡保険金合計金二、一〇〇万円の支払いを求めるところ、控訴人が本件事故により訴外人が被つた傷害と訴外人の死亡との相当因果関係の存在を否認し、本件保険契約にもとづく控訴人の死亡保険金支払義務を争うので以下検討する。

2  先ず控訴人は、本件自家用自動車保険契約の自損事故条項、搭乗者傷害条項に基づき、被保険者の相続人が死亡保険金請求権を取得するには、事故と傷害との間に相当因果関係のあることの外に、傷害と死亡との間にも相当因果関係のあることすなわち二重の相当因果関係の存在が必要であるとし、本件衝突事故により訴外人が受けた傷害が鼻背部打撲傷に過ぎず、右傷害と訴外人の死亡との間に相当因果関係を認め難いから、訴外人の相続人たる被控訴人が死亡保険金請求権を取得しないと主張する。そこで訴外人と控訴人間に締結された自損事故条項と搭乗者傷害条項についてみるに右の自家用自動車保険普通保険約款(乙第一号証)の自損事故条項に控訴人主張のような傷害条項と死亡条項が記載されていることは当事者間に争いがないが、右の自損事故条項は、「被保険自動車の運行に起因する事故」と「被保険者の傷害」との間に相当因果関係のあることを要するとともに、右の傷害の直接の結果として被保険者死亡による損害を生じた場合には、控訴人は保険金支払責任があるとしているものであり、これは保険者は保険契約所定の保険事故が発生した場合に、これと相当因果関係のある損害について保険金支払の義務を負担するものであることをいうものに外ならない。しかして右条項の五条が、「傷害と死亡との直接の結果性を規定しているのは、傷害とは関係のない余病を併発して死亡した場合や、医療過誤などにより通常ならば死亡しないような傷害で死亡した場合など傷害と死亡との間に相当因果関係の中断のある場合を除外する趣旨にほかならず、右の直接の結果性の認定に当つては約款の両条項(一条、五条)を綜合考察して事故と死亡との間に相当因果関係が認められる場合は右の直接の結果性を充足したものと解するのが相当であり、個々の条項の存在を論拠に二重の相当因果関係を必要とするとの控訴人の所論は採用し難い。

3  そこで以上の観点から本件事故と傷害、死亡の詳細を検討すると、<証拠>によれば、訴外人の本件衝突事故により死亡するにいたる経緯について、次の事実を認めることができる。

訴外人は大正一二年七月二八日生れのものであるが、事故当日の昭和五六年一一月六日午前五時過ぎごろ、和歌山市船橋町の自宅を出て、折からの雨の中を、かねてより日課としていた願かけのための「弘法の滝」に行くために被保険自動車を運転して一人で出掛け、同日午前五時三〇分ごろ和歌山市宇治籔下八三番地先南海橋上を南から北に向つて走行していた。右の南海橋は幅員2.9メートルの狭い橋で、橋の中央部に幅員4.5メートルの退避用の個所が認けられているが、訴外人は右橋を走行中、右退避用個所の北東角の欄干に自車を衝突させ、その結果、車の前半分が南海橋上に突き出て宙ずり状態で停止する事故を惹起した。右の衝突事故によつて訴外人は鼻背部に深さ皮下に達する二個の挫創(打撲傷)、鼻骨骨折等の傷害を受けたが、訴外人の死体検案書の作成にあたつた医師の所見によれば、この傷害は訴外人運転の車のハンドルなどで打撲したことによるものとしても矛盾はないとしている。

右衝突事故は訴外人のハンドル操作の誤りによるものと推測されるが、訴外人が死亡し他に事故の目撃者も皆無のためその事故原因の詳細は必ずしも判然としない。事故当時、現場付近には小雨が降つており、右衝突事故によつて被保険自動車の前照灯も消えていた。また右の橋の欄干は高さ九五センチメートル、鉄柱の間に三本の鉄棒がわたしてあるもので身長一七八センチメートルの訴外人が身を乗り出すとバランスをくずし、落ちそうになるようなものであり、しかも右の衝突によつて欄干はぐらぐらになつていた。事故状況についての警察の見解によれば、右車の助手席ドア付近、後部トランク上にそれぞれ血痕が付着していることなどから、訴外人は助手席ドアから車外の南海橋上に出て後部トランク付近まで歩いたとみられ、訴外人はその後右橋の欄干から紀の川に転落したというものである。

同日午前五時三〇分ごろ、たまたま南海橋を車を運転して通過した訴外田尻重人が被保険自動車が欄干に衝突しているが人影がないことを見つけ、同日午前五時三八分警察にその旨通報し、同日午前五時四〇分から四二分ごろ警察官が現場に到着したが、その際、右訴外田尻及び警察官が、紀の川から「助けてくれ」との声を聞いたので、付近を捜索したが見つからず、訴外人は同日午前五時五〇分ごろ溺死し、同日午後二時ごろ紀の川を漂流している屍体が発見された。

以上の事実が認められ、右認定を左右する証拠はない。(なお訴外人が南海橋上で衝突事故を起しその直後に紀の川に転落して溺死するにいたつた事実経過の概要は、当事者間に争いがない。)

4  そして、以上認定の事実によれば、訴外人運転の被保険自動車は南海橋の鉄製欄干に衝突し、車体が欄干を突き破つてその前部が宙吊り状態になり紀の川に転落寸前の状態で停止したものであるが、事故当時、付近はまだ暗く、自車の前照灯も消えていた状態であつたものであり、訴外人は以上のような傷害を受けながら紀の川への転落を免れるため急いで助手席側ドアから脱出し、小雨の降る中を自動車の車体をつたつて後部トランク付近まで来た後、紀の川に転落したものと認められるところ、訴外人が後部トランク付近まで歩いていつた理由は、事故と受傷による精神的動揺のための夢中の行動であつたと推測されるのであるが、ともあれ事故直後、車の外に脱出して車の後部にいたり、受傷による精神的動揺もあり(当時訴外人が冷静に行動できたとは解し難い。)また事故によつて鉄製欄干がぐらぐらしていたことも一因となつてその直後に紀の川に転落、溺死したものと認めるのが相当であり、訴外人の右の衝突から紀の川への転落は、いわば瞬時の出来事とみるべきである。

そして右のような事故車の停止位置、本件事故当時の現場の状況から推測される衝撃の甚大性、訴外人の本件衝突事故・受傷と転落との間の時間的接着性を併せ考えると、本件事故直後訴外人が橋の欄干から紀の川に転落し溺死することは十分予見が可能であるということができるから、本件事故と訴外人の死亡との間には相当因果関係があると認められ、ひいては訴外人の死亡は溺死とはいえ本件事故による受傷の直接の結果として惹起されたものというを妨げないと解すべきである(したがつて訴外人が助手席から脱出した時点で因果関係は中断しているとの控訴人の主張は採用し難い。)。

控訴人は、訴外人が右事故によつて被つた傷害が鼻背部打撲傷に過ぎず、右の傷害と訴外人の死亡との間に相当因果関係を認め難いと主張し、<証拠>にも同旨の記載があるが、傷害と死亡との間にもいわゆる二重の相当因果関係を要するとの控訴人の所論が採り得ないことは前記説示のとおりであるのみならず、訴外人の被つた鼻背部打撲傷の傷害(之は相当の重傷と認むべきである。)は、本件衝突事故の惹起から訴外人の紀の川への転落、溺死にいたる因果の一つの過程であるに過ぎないのであつて、これを殊更に事故と傷害、傷害と死亡に峻別してそれぞれ相当因果関係を考察することは瞬時の出来事を徒らに複雑化し過ぎるものというも過言ではなく本件事故により訴外人の被つた傷害の程度が軽微であつて死亡の直接の原因とはいえないとして保険金支払責任を免れるとする乙第五号証の一の記載は採用できず、これと同旨の控訴人の所論も失当である。

なお搭乗者傷害条項についての認定判断も、右自損事故条項について説示したところと同一である。

5  さすれば控訴人は被控訴人に対し右各保険金の支払義務があるところ、本件保険契約の自損事故条項による死亡保険金は金一四〇〇万円であり、搭乗者傷害条項による死亡保険金が金七〇〇万円であること、被控訴人が控訴人に対し保険約款所定の期間内に保険金の請求をしたが、控訴人がこれを支払わなかつたことは、いずれも当事者間に争いがなく、その他訴外人の相続人たる被控訴人が控訴人に対し本件保険契約の自損事故条項、搭乗者傷害条項による死亡保険金の請求をなすことを妨げる事情はなんら存しないから、控訴人は被控訴人に対し、右保険金合計金二一〇〇万円を支払う義務があるものというべきである。<以下、省略>

(今富滋 西池季彦 亀岡幹雄)

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